『魔法少女まどか☆マギカ』考察 探偵のいないミステリーの先 美樹さやかの物語 その2 再掲載 *ネタバレ注意
*ネタバレ注意
前回の続きより、美樹さやかの物語を、上条恭介を真の主人公にした叙述トリックのクイズとして考察を進める。
第1・2話に恭介は出てこないので、第3話から見ていこう。
「いつも本当にありがとう、さやかはレアなCDをみつける天才だね」
と強がっているが、CDを聞きながら涙を流している。
自分で弾けもしない曲を聞きたくないというのは本当だろう。
そして第4話「奇跡も魔法もあるんだよ」
最悪の事故がここで起こった。
恭介はリハビリを頑張っていたが、医師から治療が無理なことを宣告される。
そこに見舞いに来たさやかに、自分で弾けもしない曲を聞きたくないといい、自傷行為に及び、奇跡や魔法でもない限り手は動かないと言ってしまった。
そしてさやかは、「あるよ、奇跡も魔法もあるんだよ」と事実を言いつつ覚悟を決めてしまった。
さやかは事実を言っているだけである。
だが恭介は奇跡や魔法をのことを一切知らない。
その状況で「奇跡も魔法もあるんだよ」と言われたらどう思うか考えてほしい。
ヒントはさやかが母親ポジションの人だということである。
これはヒントを額面通りに受け止めれば簡単にわかる。
筆者には、自暴自棄になった子供を母親がなだめ諭す言葉に聞こえる。
恭介もそうだと、気づいてしまったのだろう。
病院の屋上、実母の前で『アヴェ・マリア』を弾いたあとに。
そして、図星を突かれたと思ったのだろう。
おそらくは次から次へと要らないものばかり買ってくる実母と(これはステロタイプな母親のイメージだと思われる)、
聞きたくもない音楽CDを買ってくるさやかの姿を重ね合わせて、
さやか相手に母親を求めて、甘ったれて、手が動かないことを八つ当たりし、
自傷行為に及んだ挙げ句その場で、「奇跡も魔法もあるんだよ」となだめられて、同い年の幼馴染に母親を求めてそれをやっていたといたと。
当の本人の言葉に気付かされたのだろう。
さて、男が女に母親を求めていることなど、いつかは受け入れて成長し、前へ進んでいく様なことだろう。
だが、それができないからこそ中学生の子供は子供なのであって、母親を求めていると気づいてしまった相手を、思春期の少年が恋愛対象と考えるのは無理だ。(少なくとも筆者は想像できない)
こう考えると、さやかは事実を言っただけだが、恭介相手の恋愛の縁を自ら切ってしまったことになる。
さやかの最大の自爆は、魔法少女になる前に起こっていたとおもわれる。
最初に美樹さやかの物語は、『新世紀エヴァンゲリオン』のオマージュだと指摘したが、エヴァンゲリオンでは、大学時代の葛城ミサトが加持リョウジと付き合えなくなったのは、ミサトが加持に父親を求めていることに気づいてしまったからだった。
さやかと恭介のことは、これの性別をひっくり返してそのままやったオマージュである。
つづく
『魔法少女まどか☆マギカ』考察 探偵のいないミステリーの先 美樹さやかの物語 その3 恭介の退院とその後の行動原理 再掲載 *ネタバレ注意